とあるエンジニアの備忘log
2013年12月27日金曜日
Zynq 事始め1
[前回](/2013/12/ise-vivado-on-ubuntu.html)、ISE/Vivado 等のツール類のセットアップは済ませました。 では何から始めましょうか。 例えば、Zynq の評価ボードを渡され、「じゃ、立ち上げよろしく!」と言われたとしましょう。 (私が言われたみたいに。。) 膨大な資料を前に途方にくれてしまうかもしれません。 似たような状況にある人の手助けになるかどうかわかりませんが、私のたどったステップを記録しておこうと思う。 進めるには、何らかの Zynq ボードが必要となります。 私は ZC706 というボードを使っていますが、他のボードでも似たような感じだと思います。 ### まずはツールに慣れる Zynq を手にとっているということは FPGA ぐらいは経験があるという人が多いと思います。 ISE は使ったことはあるが、Vivado は初めてという人もいるかもしれませんが、 今後のことを考えれば Vivado を使いこなせた方がよいと思います。 とりあえず、ISE および Vivado で簡単な RTL のプロジェクトを作成し、FPGA を Configuration するところまでやってみます。 すでに知っている人は飛ばしてください。 まずは、 ARM は動かさずに、Zynq を純粋な FPGA として使います。 (Zynq の通常の使い方としては、ARM が最初に起動し、ARM から FPGA を Configuration するのですが、それはもうちょっと先に回します。) #### まずは planAhead でやってみる ISE のインストールディレクトリに `settings64.sh` (または `settings64.csh`) というのがあるので、それを `source` したあと、 $ planAhead で起動。 「Create New Project」→「RTL Project」を選択。 「Add File...」 か 「Create File...」 で RTL (Verilog or VHDL) を追加。 とりあえず練習ですので、プッシュボタンを押すと LED が点灯するぐらいの RTL でよいです。 ウィザードの最後で Parts で Zynqチップ名 (xc7z0xx) か評価ボード名を選ぶ。 制約ファイルは自分でいちいち書くのは面倒ですが、大抵はすでに用意してくれている。 自分の場合は、 ZC706 ボードなので、Xilinx のサイトから `zc706-ucf-xdc-rdf0207-rev1-0.zip` というのをダウンロード。 RTL と制約ファイル(UCF)を追加できたら、Synthesis, Implement, Generate Bitstream と進む。 PC とボードの JTAG ポートをつなぐ。 ZC706 の場合は、ボード上に JTAG <-> USB 変換チップが載っているので、USBケーブルでつなぐだけです。 iMPACT を起動すると、「zynq7000_arm_xxx」(=ARM) というのと「xc7z0xx」(=FPGA) というが見えるはず。 2つ見えるのは、Zynq のパッケージ内で ARM コアと FPGA が JTAGデイジーチェーンで繋がっているためです。 FPGA の方を選んで、bit ファイルをダウンロードすると、うまくいくはず。 LED が光ることを確認して下さい。 #### Vivado でもやってみる Vivado のインストールディレクトリに `settings64.sh` (または `settings64.csh`) というのがあるので、それを `source` したあと、 $ vivado で起動。 planAhead と操作手順はほぼ同じですが、制約ファイルが従来のUCF ではなくて、 XDC というファイルです。 Tcl の文法で書かれている。 Synthesis, Implement, Generate Bitstream と進み、最後は、 iMPACT ではなくて、 「Open Hardware Session」というのを選ぶ。 「Open Hardware Session」→「Open a new hardware target」を選び、 `Server name
` で PC の IPアドレスを入力する(普通はデフォルトでそうなっているはず)。 ポート番号はそのままでよい。 あとは、「Program device」を選べば、 FPGA を Configuration できる。 ちなみに、「Launch iMPACT」というのも選べますが、Vivado 自体は iMPACT を含んでいませんので、 iMPACT を使いたいならば、ISE もインストールし、 `impact` が PATH に含まれていないといけません。 「Open Hardware Session」 というのは、ISE の時の iMPACT と ChipScope の置き換えで、たぶんこっちの方が便利だと思います。 サーバー&クライアントで使用できます。 このやり方は[後日](/2014/01/vivado-fpga.html)紹介します。 ### もうちょっと RTL を足してみる 上記ができたら、クロックを入れて、LED 点滅とかもやってみます。 クロックラインを BUFG に通す、タイミング制約の追加とかが必要です。 特に Vivado が初めての場合は、 XDC でのタイミング制約の書き方を確認しておきます。 「Project Manager」 → 「Templates」とたどれば、書き方がわかるので、コピペでいけますが。
2013年12月17日火曜日
ISE & Vivado 設定 on Ubuntu
前回記事 [Zynq 入門中](/2013/12/zynq.html) の続きです。 ISE と Vivado を Ubuntu にインストールします。 前回も述べたように、Ubuntu はサポート外なので、そのままでは動かない部分があります。 バージョンによって若干の差があるかもしれないので、ここでは以下のバージョンとします。 - Vivado 2013.2 - ISE 14.6 - Ubuntu 2013.04 64bit ### Vivado のセットアップ #### インストール Xilinx のページから tar をダウンロードして、以下を実行。 $ Xilinx_Vivado_SDK_2013.2_0616_1.tar $ cd Xilinx_Vivado_SDK_2013.2_0616_1 $ sudo ./xsetup 途中のダイアログで Cable Driver をインストールする選択肢があるが、選んでも多分うまくいかないので、 $ cd /opt/Xilinx/Vivado/2013.2/data/xicom/cable_drivers/lin64/digilent$ $ sudo ./install_digilent.sh で直接インストール。 #### 文字化け(豆腐)の修正 planAHEAD は文字化けしないのだが、 Vivado はステータスバーの表示が豆腐になってしまう。 修正の仕方がわからないが、とりあえず日本語である必要はないので、メニューから Tools -> Options... -> General -> Language and Tooltips とたどり Japanese から English へ変更。 #### Documentation のLink が開かない場合の対処方法 IP などの Documentation を開こうとすると、 /opt/Xilinx/Vivado/2013.2/ids_lite/ISE/lib/lin64/libstdc++.so.6: version `GLIBCXX_3.4.15' not found (required by /usr/lib/firefox/libxul.so) のようなエラーが端末に出て開かない。 Vivado から起動された firefox がライブラリ検索で `/opt/Xilinx/Vivado/2013.2/ids_lite/ISE/lib/lib64/` 以下を見に行ってしまって、 しかも Ubuntu に元々インストールされているものより古いのが原因のようだ。 以下のように Vivado 添付のライブラリを退避し、`/usr/lib` 以下のものへシンボリックリンクを貼ることで動くようになった。 $ cd /opt/Xilinx/Vivado/2013.2/ids_lite/ISE/lib/lin64 # mv libstdc++.so libstdc++.so.bak # mv libstdc++.so.6 libstdc++.so.6.bak # ln -s libstdc++.so.6 libstdc++.so # ln -s /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libstdc++.so.6 ### ISE のセットアップ #### インストール Xilinx のページから tar をダウンロードして、以下を実行。 $ tar xf Xilinx_ISE_DS_14.6_P.68d_3.tar $ cd Xilinx_ISE_DS_14.6_P.68d_3 $ sudo ./xsetup #### PlanAhead が起動しない場合の対処方法 PlanAhead が異常終了し、コンソールに以下のようなメッセージが出る。 /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/PlanAhead/bin/rdiArgs.sh: 95 行: 13848 Segmentation fault (コアダンプ) "$RDI_PROG" "$@" 以下のようにして、ISE に付属の libjvm.so を置き換える。 $ sudo apt-get install openjdk-7-jre $ cd /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/PlanAhead/tps/lnx64/jre/lib/amd64/server/ $ sudo mv libjvm.so libjvm.so.bak $ sudo ln -s /usr/lib/jvm/java-7-openjdk-amd64/jre/lib/amd64/server/libjvm.so [ここのページ](http://forums.xilinx.com/t5/Installation-and-Licensing/RHEL5-64-bit-ISE-13-1-PlanAhead-launch-from-w-in-ISE-fails/td-p/148624/page/2) を参考にしました。 #### XilinxNotify のエラーダイアログの対処方法 root 権限でインストールした場合、PlanAhead 起動時に以下のようなエラーダイアログボックスが出る。 A disk write failure occurred. There may be insufficient disk space or you may not have write permisson at the following directory. /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/.xinstall Press Retry to try again, press Cancel to exit XilinxNotfy エラーの原因は、 root にしか書き込み権限のない `/opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/.xinstall/` の下に `xilinxnotify.log` というファイルを作ろうとしているため。 インストール時は、root 権限、アプリ実行は 一般ユーザーで行うのが普通なのに、なんでこんな場所にログファイル作っちゃうんだろうね? クオリティ低いですな。 とりあえず以下のようにして回避。 $ sudo chmod a+w /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/.xinstall #### Xilinx License Configuration Manager からライセンス取得できない場合の対処方法 Connect Now ボタンを押しても、ブラウザが開かずに端末に以下のメッセージが出ている。 /usr/lib/chromium-browser/chromium-browser: /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/common//lib/lin64/libstdc++.so.6: version `GLIBCXX_3.4.9' not found (required by /usr/lib/chromium-browser/chromium-browser) 以下のようにして shared object 置き換え。 $ cd /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/common/lib/lin64 # mv libstdc++.so libstdc++.so.bak # mv libstdc++.so.6 libstdc++.so.6.bak # ln -s libstdc++.so.6 libstdc++.so # ln -s /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libstdc++.so.6 #### Document が開かない場合の対処方法 ドキュメントをブラウザで開こうとするが、GLIBC の互換性の問題で開かない。 上記と同じなので、端末のエラーメッセージを見ながら `libstdc++.so` を置き換える。 ### fpga editor が起動しない場合の対処方法 ### コンソールに以下のようなエラーメッセージが出る。 /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/_fpga_editor: error while loading shared libraries: libXm.so.3: cannot open shared object file: No such file or directory ここでも shared object の問題のようだ。 パッケージ名がわからない場合は `apt-file` で調べられる。 $ apt-file search libXm.so.3 libmotif4: /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libXm.so.3 $ sudo apt-get install libmotif4 一歩前進したが、まだ以下のようなエラーメッセージが出る。 /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/_fpga_editor: error while loading shared libraries: libstdc++.so.5: cannot open shared object file: No such file or directory 以下をインストール。 $ sudo apt-get install libstdc++5 まだ以下のようなエラーメッセージが出る。 Wind/U X-toolkit Error: wuDisplay: Can't open display 環境変数が `DISPLAY=:0.0` になっているのを修正 $ export DISPLAY=:0 まだ以下のエラーメッセージが出る。 Wind/U Error (193): X-Resource: DefaultGUIFontSpec (-*-helvetica-medium-r-normal-*-14-*) does not fully specify a font set for this locale フォントをインストール。 $ sudo apt-get install xfonts-75dip xfonts-100dpi ようやく起動した。 #### ChipScope が起動しないときの対処方法 ChipScope Analyzer が起動せずに /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/analyzer: 72: /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/cs_common.sh: XIL_DIRS[0]=/opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/: not found /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/analyzer: 73: /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/cs_common.sh: count++: not found /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/analyzer: 152: /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/cs_common.sh: Syntax error: Bad for loop variable というエラーメッセージが端末に出る。 これは `cs_common.sh` 中で bash の拡張機能を使っているにも関わらず、shebang が `#/bin/sh` になっているから。 Xilinx がサポートしている RedHat系ディストリビューションでは `/bin/sh` が `/bin/bash` へのシンボリックリンクになっているために、__たまたま__ 動いてしまう。 Ubuntu では動かない。(Ubuntu では `/bin/sh` は `/bin/dash` へのシンボリックリンクになっている。) そこで、 `/opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/cs_common.sh` を開き、一行目を `#!/bin/bash` に書き換えるが、やはり動かない。。 よく見ると、 analyzer から `cs_common.sh` を source している。 なので `/opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/ISE/bin/lin64/unwrapped/analizer` を開き、一行目を `#!/bin/bash` に書き換えると、、ChipScope が起動するようになりました。 #### Export Hardware for SDK が失敗する場合の対処方法 ダイアログボックスが開き、 ERROR: [Common 17-49] Internal Data Exception: xps application failed! というメッセージが出る。`gmake` がいるようだ。 ln -s /usr/bin/make /usr/local/bin/gmake ### ISE と Vivado 共通のセッティング #### Xilinx SDK で arm-xilinx-eabi-gcc が not found の場合の対処方法 xsdk を起動して、プロジェクトをビルドするときに /bin/sh: 1: arm-xilinx-eabi-gcc: not found のエラーがでる場合がある。 `settings64.sh` を source すれば、 `arm-xilinx-eabi-gcc` への PATH も通るはず。 端末上から `arm-xilinx-eabi-gcc` が見えているのに相変わらず動かない場合。 $ which arm-xilinx-eabi-gcc /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/EDK/gnu/arm/lin/bin/arm-xilinx-eabi-gcc $ arm-xilinx-eabi-gcc --version arm-xilinx-eabi-gcc: No such file or directory 原因は、`arm-xilinx-eabi-gcc` が 32bit ホスト用であるため。以下を実行してみればわかる。 $ file `which arm-xilinx-eabi-gcc` /opt/Xilinx/14.6/ISE_DS/EDK/gnu/arm/lin/bin/arm-xilinx-eabi-gcc: ELF 32-bit LSB executable, Intel 80386, version 1 (SYSV), dynamically linked (uses shared libs), for GNU/Linux 2.2.5, stripped これを 64bit ホストで動かすには 32bit 用のライブラリが必要なので、以下のようにインストールする。 $ sudo apt-get install ia32-libs もはや 32bit ホストで FPGAやるのは難があるのだから、 64bit ネイティブでツールをそろえて欲しいところですが。。 #### ノードロックライセンスを全ユーザーから使えるようにする 通常はライセンスファイルは ~/.Xilinx に置かれるが、環境変数で変更できるので、 /opt/Xilinx 以下に置き、各ユーザーが export XILINXD_LICENSE_FILE=/opt/Xilinx/Xilinx.lic の環境変数設定。 ### 端末表示関連 Zynq 上の ARM と UART で通信しなくてはならないので、そのセットアップ。 最近のデスクトップPC にはシリアルポートがついてなかったりするのですが、 評価ボード上には USB-UART 変換(CP210X)が載っているので問題なし。 #### USB-UART ドライバ Windows ならば、SiliconLab のページから CP210X のドライバをダウンロードしてくるところですが、 Linux では、Kernel のソースツリーに CP210X のドライバが含まれているので、何もしなくてよい。楽だな。 Ubuntu ならば `CONFIG_USB_SERIAL_CP210X=m` でビルドされているので、ボードと USBケーブルでつなぐだけで勝手にモジュールがロードされるはず。 試しに、ボードとUSBケーブルでつないでみて、 $ lsmod | grep ^cp210x cp210x 17382 0 みたいに表示されれば、ちゃんとロードされている。 ちなみに、ドライバは `/lib/modules/3.*.*-*-generic/kernel/drivers/usb/serial/cp210x.ko` にインストールされている。 モジュールのロードと同時に `/dev/ttyUSB0` が作られているはず。 $ ls -l /dev/ttyUSB0 crw-rw---- 1 root dialout 188, 0 8月 22 11:08 /dev/ttyUSB0 でわかるように、dialout に所属していないとアクセスできないので、以下のようにする。 $ sudo gpasswd -a
dialout #### ckermit メモ ターミナルソフトは、 Windows なら TeraTerm が有名ですが、Linux なら ckermit がおすすめです。 $ sudo apt-get install ckermit でインストール。 $ kermit で起動。 (/home/masahiro/) C-Kermit>set line /dev/ttyUSB0 (/home/masahiro/) C-Kermit>set carrier-watch off (/home/masahiro/) C-Kermit>set speed 115200 /dev/ttyUSB0, 115200 bps (/home/masahiro/) C-Kermit>connect でつながるが、毎回入力するのが面倒なので `~/.kermrc` に set line /dev/ttyUSB0 set carrier-watch off set speed 115200 connect を書いておきましょう。 閉じるときは `Ctrl-\` のあとに `c`。
2013年12月16日月曜日
Zynq 入門中
### Zynq とは 最近、仕事で Zynq やってます。 Zynq というのは、 Xilinx からリリースされている ARM + FPGA の SoC である。 Xilinx は All Programmable SoC というキャッチフレーズで呼んでたりする。 なお、Altera からは SoC FPGA という同様のものが出ている。 CPU と FPGA を1チップに、というコンセプトは今に始まったことではない。 私の知る限り、 Virtex II のころから PowerPC 内蔵 FPGA はあったし、ソフトコアなら Microblaze もある。 しかしながら、世の中の流れは ARM なわけで、 ARM を採用している時点で裾野は広い。 かくいう私も ARM 以外のアーキはさっぱりわからないので、これは助かる。 しかも SoC としての完成度が高いので、使いこなせればいろいろと応用が効きそうだ。使いこなせればね。。 とりえあず、入門程度に LED を光らせる回路を作って、ARM から制御する簡易プログラムを組むぐらいのことならば、チュートリアル見つつやっていけばなんとかなる。 ただし、最終的には、自作のハードウェアIP を実装して、 Linux のデバイスドライバも書いて、っていうところに行き着くことが多いだろうから、なかなか一筋縄ではいかなさそうだ。 ともかく愚痴だけにならないように、役に立ちそうな内容を書き綴っていけたらと思う。 ### 最初の分かれ道: ISE か Vivado か 現時点では、IDE (統合開発環境)の選択肢が大きく分けて 2つある。 ISE は昔からあるツールで Xilinx の FPGA をやったことのある人にはお馴染みだろう。 一方、Vivado (ビバドと読む) は新しいツールである。 #### ISE で Zynq をやる場合 プロジェクトマネージャーとして 「Project Navigator」か 「PlanAhead」を使うことになる。 「Project Navigator」は内部から「PlanAhead」を呼び出すので、プロジェクト管理自体に「PlanAhead」を使ってしまうのがよいと思う。 「PlanAhead」上で RTL や制約ファイル、ジェネレートしたIPなどの全体の管理を行い、ハードウェア情報のエクスポートも行う。 IP を生成したり、Zynq の設定をいろいろといじくったりするには、 XPS (Xilinx Platform Studio) を使う。 FPGA のコンフィグレーションには iMPACT を使い、回路の解析(ロジアナ)には ChipScope を使う。 配置配線結果を見ようと思ったら、 FPGA Editor が起動する。 お分かりのように、用途ごとにツールが乱立しており、ISE はそんなツールの集合体なのである。 上記はハード屋さんが使いこなすツールで、さらにソフトの開発には XSDK (Xilinx SDK = Eclipse を Xilinx 用に拡張したもの)を使う。 #### Vivado で Zynq をやる場合 Vivado を選択した場合、ハード周りのツールは Vivado 1つに統合される。 ハード開発に Vivado、ソフト開発に XSDK と2つのツールで済んでしまうのはメリットだ。 #### Vivado の長所短所 長所 - PlanAhead, XPS, iMPACT, ChipScope, FPGA Editor など、用途ごとにいろんなツールが起動していたのが、Vivado 1つで済む。 - IP間の接続などを Schematic で設計可能。 XPS では、IP 間のバスや信号をダイアログで選択しながら、接続していく(画像左側)ため、けっこう手間。 Schematic 表示も可能ではあるが、あくまで表示だけであって、Schematic 上で編集したりはできない。 一方、Vivado では回路図を引くような感じで、さくさくとポート間を接続していけるので、楽(画像右側)。 [![XPS](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgJLHVFUGfdOBGMTE4DZEO31NDBShOgbDFZkVdeFYYWtLkbtTqvNoiLHqJlja-bcpFz-pKHXZx1xi__nOuBOfXIiEl1e3ZQ-iiBOoj-j37Q7oy3aiOMIhT2jibKPLkDoRRWttJt5fN6YJ0/s320/xps.jpg)](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgJLHVFUGfdOBGMTE4DZEO31NDBShOgbDFZkVdeFYYWtLkbtTqvNoiLHqJlja-bcpFz-pKHXZx1xi__nOuBOfXIiEl1e3ZQ-iiBOoj-j37Q7oy3aiOMIhT2jibKPLkDoRRWttJt5fN6YJ0/s1600/xps.jpg) [![XPS](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhjbjPRhDjZ7B6G22YuwFrKHnTzh-t39ulvhuXKvmnzuGShbsR49ZlWvuIIsD7O5CR2JV-mmUb3wQnM-IQUfzFogPWOKwknnYha8O2fLCti21zK7jORRpTSYBoiIon6nmmHCknO28O4yNU/s320/vivado.jpg)](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhjbjPRhDjZ7B6G22YuwFrKHnTzh-t39ulvhuXKvmnzuGShbsR49ZlWvuIIsD7O5CR2JV-mmUb3wQnM-IQUfzFogPWOKwknnYha8O2fLCti21zK7jORRpTSYBoiIon6nmmHCknO28O4yNU/s1600/vivado.jpg) - 今後のアップデートが期待できる。 Xilinx の開発の中心はすでに ISE から Vivado へと移っていると思われる。 今後 ISE のメンテを積極的にやっていくつもりはないであろうから、すでに発覚している ISE のバグの修正はあまり期待できない。 (特に、Linux 上で buggy な PlanAhead を使うのに嫌になっている。) - リモートで、FPGA のコンフィグレーションやロジック解析ができる。 - 合成、配置配線が ISE より速い。 短所 - よくも悪くも、新しいツールのため、こなれていない。 使っていた限り、現時点の最新版 (2013.2) でも十分使えると思うが、いくつかバグも目についた。 (Linux 版で、Zynq 設定の GUI インターフェースがバグってる。) ただし、今後のアップデートで、修正が期待できる。 - Vivado に対応していないドキュメントが結構ある チュートリアルなどが、ISE を対象に書かれている。 ある程度は、ISE と Vivado の両方の使い方を理解した上で、 ISE について書かれたドキュメントを頭の中で Vivado に変換しながら、読み進めていくのが良さそうだ。 - ISE に慣れた人にとっては、新たな勉強が必要 ISE との使い方が大きく異なるということはないのだが、ある程度差分があるので、多少の勉強は必要だ。 特に、制約ファイルは ISE で長年使われていた UCF ではなくて、 Vivado では XDC という Tcl ベースの書き方になる。 以上のことから、ツールとしては ISE と Vivado を両方共インストールし、両方のツールの基本的な使い方を理解 (少なくとも ISE を対象にしたドキュメントを読み進められるように)した上で、Vivado をメインに使っていくことにする。 ### Windows か Linux か FPGA も巨大になってきて、64bit OS 上にインストールするのがほぼ必須になってきているが、さて、ツールのインストール先は Windows か Linux か。 Zynq 上で Linux を動かすのならば、ISE/Vivado も Linux 版をインストールするのがよいでしょう。 Linux Kernel のビルドには Linux ホストが必要になるためである。 ハード開発は Windows、ソフト開発は Linux と分かれていると、生成したバイナリをいちいち転送して、結合して、なんてのを繰り返すことになって面倒なのだ。 ハード専任担当者でソフトを触る予定がない人や、Linux を動かす予定がない人は、Windows/Linux は好きに選べばよい。 なお、ツールのライセンスはノードロックが通常(MACアドレスを登録します)と思いますが、3回まではライセンスの移動できます。 Xilinx のページからライセンスファイルを再発行すればOK。 なお、無限に移動させたい場合は、USB - Ethernet 変換を買って、それをドングル代わりに使うのがよいかも。。 いろいろ書きましたが、 Windows は 私の趣味に合わないので、以下 Linux 上に ISE と Vivado をインストールして進めます。 ただし、 Linux 版の ISE/Vivado で正式にサポートされているのは Fedora であって、 Ubuntu はサポート対象外です。 ただし、多少の設定を最初にやれば、 Ubuntu でも十分に使えるようになる。 Ubuntu だけあって、このあたりの情報も検索すればいろいろと出てくるので問題無し。 [次回](/2013/12/ise-vivado-on-ubuntu.html)は、ISE/Vivado を Ubuntu にインストールする際の設定をまとめようと思う。
新しい投稿
前の投稿
ホーム
登録:
投稿 (Atom)